(それで夏目君ってば、居眠りして怒られちゃって…)


あらあら、貴志君ったら。


(でも本人は寝ぼけてて何で怒られたか分かってないんですよ…)







(夏目君のお宅にお邪魔して早二時間)


(塔子さんと滋さんに渡すチョコを持ってきたのはいいんだけど…渡すのが恥ずかしいというか…そんなこんなで今だに鞄の中に入っているチョコを思って小さくため息をつく)



(塔子さんなら喜んで受け取ってくれるって分かってるのに…はぁ…)






…ちゃん?どうかした?


(えっ!)


ため息。幸せが逃げちゃいますよ。


(あ…えっと……)



(渡すなら今しかない、気がする)




(と、塔子さん、これ…)






これは……ふふ、チョコレートね?


(バレンタインなので…)


ありがとう、嬉しいわ!

バレンタインにチョコを貰ったのなんて何年振りかしら。



(後、これ。滋さんの分も)


滋さんにも用意してくれたの?

…ふふ、ありがとうちゃん。





(優しく微笑む塔子さんに何だか恥ずかしくなって俯いていると頭を優しく撫でられて)

(真っ赤になっている私と嬉しそうに笑っている塔子さんを、丁度居間にお茶のお代わりを貰いに来た夏目君が不思議そうな顔で見ていた)

◎塔子さん